研修講師メッセージ vol.01

知念保則

知念 保則

研修講師として、試験の合格からガイドデビューまで、そしてその後について簡単にお話ししたいと思います。

通訳案内士試験の合格後は、早目にお住まいの都道府県の観光課で案内士の登録を済ませます。それと前後して、2月から3月にかけて当研究所を含めて各ガイド団体が新人ガイド対象に新人ガイド研修を実施しますので、受講をお勧めします。この研修では観光案内の仕方や観光案内以外の添乗実務の基本が学べます。時間が許せば、関東研修と関西研修の両地区の研修に参加するとよいでしょう。両地区の研修では日本観光のハイライトとも言うべき代表的な観光地を訪問するからです。外国人観光客の訪問先もこの両地区に集中しているのが現状です。

研修参加後に、ご自分でもう一度現地に行って、十分時間を取って下見をしながら予行演習をすると研修で学んだことがより定着します。主要観光地はガイド依頼があったらすぐにでも案内できるように普段から準備しておくことが大切です。

次の段階は旅行会社訪問です。旅行会社の通訳案内士の担当(アサイン担当者とも呼ばれる)の方とお会いします。その際に履歴書・経歴書・名刺等をお渡しし、熱意と誠意をもって案内可能な観光地や稼働日等をお話しするとよいでしょう。ここでの注意点は、「お仕事をさせていただく」という姿勢で面接に臨むことです。また、旅行会社訪問の際は、いわゆる社会常識も念頭に置いて行動してください。電話の対応や履歴書の書き方、言葉遣いで、この方はガイドに向いているかどうか判断される場合も多いからです。このように何社か旅行会社を訪問します。

いよいよガイドデビューが近づいてきます。 駆け出しの頃は成田の送迎のみといった仕事もあります。直接観光案内と関係のないお仕事も積極的に受けるようにしてください。長いツアーでは空港の送迎も含まれる場合が多いからです。要するに何事も経験と位置づけて仕事に取り組む姿勢が重要です。早い方で3月から4月頃に、旅行会社からツアーの依頼があります。初めは何事も不安がつきものですが、この仕事も例外ではありません。まさに「清水の舞台から飛び下りる」気持ちで引き受けるとよいでしょう。案ずるより産むがやすし、を信じて。

デビュー後は、依頼される一つ一つのお仕事を丁寧に、情熱を傾けて行えば、旅行会社や関係機関の方々に信頼されるようになり、さらにお仕事が増えていきます。このように一つ一つ経験を積みながら、頼りがいのあるガイドさんに成長していくのです。

合格してからガイドデビューまでをお話ししましたが、オフシーズンなどのお仕事のあまりない時は、普段気になっている事項やお客さんから訊かれてうまく答えられなかった事項をまとめて調べる絶好の機会になります。
当研究所では新人ガイド研修以外に、より専門的なガイド研修も定期的に開催していますので、このような研修に参加して経験や知識の幅を広げることも大切です。また、当研究所では分科会という会員相互に学び合う制度があります。より専門的な分野を他の会員とともに研究し、討議することを通してお仕事に活かすことができます。このような分科会は会員同士の情報交換の場としても役立っています。
会員以外の方も自由に見学ができますので、興味のある方は一度お立ち寄りください。

最後に、このガイドの仕事には「終わりはない」ということを強調したいと思います。つまり絶えず学び続けることが大切です。世の中の変化とともに、お客さんの興味も関心も変わってきます。日本も世界も変わっていきます。その変化に応えるためにはガイドさんも日々研鑽が必要になります。

良きガイドさんに必要な資質は、と問われれば、次のようにお答えしましょう。 それは一つに体力、一つに好奇心、一つに旺盛な知識欲、最後に、最も大切な、誰にでも好かれるような豊かな人間性、とお答えしましょう。

それでは良きガイドを目指してともにこの道を歩んで行きましょう。